奇跡の社会科学(著者:中野剛志)

オススメ本
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こんにちは、momonoineneです。

今回は「奇跡の社会科学」の内容と感想です。

この本は、歴史の本で興味を持ったトクヴィルの事が書いてあったので読んでみたのですが、すごくおもしろかったので紹介します。

社会科学に興味がある方トクヴィルが気になってる方にオススメです。

それではどうぞ、ごらんください。

↑これは紙の書籍ですが、電子版もあります。

表紙に書いてある通り、名著の内容を理解し、現代の問題を解決しようとするのがこの本の目的です。

社会科学は何百年前に書かれたものが現代でも有効だそうで、古典が大切だそうです。

ちなみに社会科学とは、世界の政治や経済がどうしてそうなったのか、どうしたらいいかに答える学問だそうです。

社会科学の天才たち8人の著作について書かれています。

その8人とは、

マックス・ウェーバー、エドマンド・バーク、アレクシス・ド・トクヴィル、カール・ポランニー、エミール・デュルケーム、E・H・カー、ニコロ・マキャヴェリ、ジョン・メイナード・ケインズ

です。

どれも良かったのですが、特に私が好きな部分を紹介しますね。

詳しく知りたい方は、ぜひ本書を読んでみてください。

私でも名前を知っている、有名な社会学者です。

この方が明らかにしたのが、「効率性と合理性を徹底的に追求すると、かえって非効率を生む事がある」という事だそうです。

「数値化」「マニュアル化」して、それが行き過ぎてしまうと、組織が硬直化し「逆機能」が働いてしまうそうです。

民主主義では多数の人の意見(世論)が専制する独裁政治だ、と民主主義政治の怖ろしさを発見したと書かれています。

そこでは多数の意見がいいとなると、少数の人を精神的に追い込む事になってしまうそうです。

言論の自由があっても、多数の意見と違えば非難されてしまって、黙らなくてはならなくなるそうで、世間で言う「同調圧力」で、「空気を読む」という表現もされます。

また、「平等」は人々を連帯させず孤独にするので、専制政治にとって都合がいいそうです。

では、私たちはどうしたらいいのでしょうか?

トクヴィルは「個人が自律して、人々の絆によって社会を豊かにする事」、つまり中間団体(組合・業界団体・自治組織・クラブなど)に帰属し、コミュニケーションを重ねて精神を発達させるべきだと言っていました。

「自由主義」の問題の本質について語られています。

自然環境や社会をすり潰していく、市場メカニズムのことを「悪魔の碾き臼」と呼んだそうです。

そして、市場経済による社会の破壊が激しくなると、社会はそれに対抗して過剰に結束して暴走する(イタリアのファシズムやドイツのナチズムなど)とのことです。

「自殺論」で、自殺がどうやったら防げるのかについて書かれていました。

まず自殺の原因ですが、病気や生活苦だけではなく、突然の社会変化によっても自殺は増えるそうです。

逆に、戦争・選挙・政変は「社会を結束させて」自殺者数を減らすそうです。

また、個人主義的になり、共同体や社会から孤立してしまうと「生きる意味を見失って」自殺に向かいやすくなるようです。

日本も昔は自殺が少なかったそうですが、「構造改革」により規制緩和や自由化が進み、日本の経済社会が大きく変わった年に自殺はピークに達したそうです。

将来に不安があるとき(不況時)は雇用を作るしかない、そうです。

それは不安のある時はみんなお金を使いたがらないから、雇用がなくなるので、政府などが仕事を生み出して雇用を作るのが大切なんだそう。(ちなみに日本の失われた30年は、公務員も雇用を減らしてます)

資本主義を動かすのは人々の思い込み、勘違い(雰囲気なども)です。

ケインズは、株式市場の参加者が少人数の方が安定するので、金融取引に課税することを提案したそうですが、今は「規制緩和」などで株式市場の参加者は多いので、金融危機が起きやすくなってしまったとのこと。

それからケインズは、「世界を支配するものは思想」と言っています。

政治哲学の分野では、30歳以降になって新しい理論の影響を受ける人は少ないので、現在の事態に適用する思想は最新のものではないので、現実と政策のズレが起こるそうです。

昔の日本社会は「高信頼社会」でしたが1996年以降、「構造改革」で地域の共同体が衰退し、人間関係が希薄になって経済、政治が衰退していったそうです。

また、自殺を防ぐには職業集団や同業組合に属させて、個人を自殺から守ると言う提案もされていましたし、どうも社会的なつながりが重要みたいです。

また、現代は刻々と変わる時世に対応していく事が求められています。

私たちも、常に世の中の新しい思想や知識を取り入れる事が求められていると感じました。

天才のうちの1人にマキャヴェリがいるのが驚きでした。

マキャヴェリといえば、「君主論」ですが、チェーザレボルジアの熱狂的なファンのイメージです。

チェーザレの一族の個性が強烈すぎて、私の中でマキャヴェリの影が薄くなってました。

他にも、日本では「保守」という言葉が異なった意味で使われているのも初めて知りました。

バークが「保守の元祖」で、社会を抜本的に変えるのに反対していたそうです。

これは「エドマンド・バーク」(『フランス革命の省察』で有名)のところで書かれていますので、気になった方はぜひ本を読んでみて下さい。

また、日本では政治家・官僚・社会科学者が「社会科学」について無知で、それゆえにデタラメな改革を進めてきた、とも書かれていました。

ここの部分からは著者の憤りが感じられて、政治家に「社会科学」を真剣に学んで欲しいと思いました。

他にも、現代日本の失策についてたびたび言及されていました。(デフレになったのに増税など)

著者は構造改革の時、構造改革の危険性を色々な方に訴えたそうですが、無駄に終わったそうです。

ですが、構造改革の中止の実現はしませんでしたが、こういう風にしてもらえただけでも氷河期世代としては救いがあるというか、ありがたく思いました。

社会科学は奥深い学問だと、この本を読んでつくづく感じました。

社会は複雑だし、人間関係も難しいですので、改革をしてみても思うようにいかない事を改めて認識しました。

そしてそんな社会科学を作り発展させてきた偉人はすごいですね。

何百年も前に、こんな発見をしていた事に驚きです。

では、「奇跡の社会学」まとめです。

  • 社会科学の古典を学ぶ事で、現代の問題の解決の糸口が見つかる
  • 「共同体」が重要
  • 思想も知識もアップデート(更新)していこう

読み応えのある本で、著者の他の本も読みたいと思いました。

なかなか社会人になってこういう学問の本を読むことはないのですが、やっぱり学問の知識は大切ですね。

ちょっと他の分野の本も色々読んでみたいです。

もし、おもしろそうと思ったら、ぜひこの本「奇跡の社会科学」を読んでみてくださいね、では。

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